マウス操作とアニメーション処理

3DCGは立体を扱うので、見る角度(カメラアングル)によって得られる画像が変化します。そこで、マウス操作で視点を動かせると便利です。ここでは、このような処理の実装方法について扱います。

- 目次 -

イベントハンドラ

ここでは詳しく扱いませんが、 GUIコンポーネントに対してマウス操作などのアクションが行われた際(一般に「イベントが発生した」と言います)、 システム側からイベントハンドラという特別な関数が呼び出されます。 詳しくは GUIライブラリのガイド をご参照ください。

イベントハンドラの概要図
イベントハンドラ
ユーザーによる操作などのアクションが行われた際(イベント発生)、イベントハンドラに記述した処理が実行される。

例えば、マウス操作によってカメラアングルを変化させたい場合、 マウス操作に対するイベントハンドラを作成する必要があります。 これには標準で用意されているイベントハンドラを使用する方法と、 自分で独自にイベントハンドラを記述する方法があります。

前者には、一行で済むので簡単という利点があります。 また後者は、細かい部分まですべて思い通りに設計できるという利点があります。 ここでは前者の、標準のもので済ませる方法を使用します。

標準のイベントハンドラを利用するには、 setGraphics3DDefaultEventHandler 関数を使用します。

- 関数の形式 -

void setGraphics3DDefaultEventHandler (
  int rendererID, int componentID
)

引数は以下の通りです:

アニメーション

無限ループ

アニメーション処理を行うには、プログラム起動時から終了時まで、 ずっと繰り返し画面描画を行い続ける必要があります。 つまり、いわゆる「無限ループ」のような処理フロー(処理の流れ)を設ける必要があります。

※ もちろん、アニメーションやプログラムの終了時点でループは終わるので、真の無限ループではありませんが、動作中の処理の流れは無限ループと同じです。
無限ループの概要図
アニメーションの無限ループ
プログラム起動時から終了時まで、ずっと繰り返し画面描画を行い続ける、いわゆる無限ループが必要。

さて、この無限ループ状の処理フローは、while制御構文の条件式に、 trueの値を持つbool型変数を指定する事で簡単に実現できます。 こうすると常にループ条件が真になるので、いつまでもループ内の処理が繰り返され続けます。 アニメーションを終了させる最は、このbool型変数の値をfalseにします。


bool mainLoopState = true; // アニメーションを終了させる際にfalseにする
while( mainLoopState ){

    /* この中が無限ループ: ここに描画などの処理を記述する */

}
Loop.vcssl

ウィンドウを閉じた際に無限ループを脱出

無限ループ状の処理フローを使用する場合は、ウィンドウを閉じた際に無限ループを脱出し、 その後exit命令をコールして、プログラムを自動的に終了させるようにしましょう。 そうしなければ、もしVCSSLコンソールが不可視化されていた場合や、 そもそも表示されないような処理システムで実行した場合に、 プログラムを終了させる手段が無くなり、いつまでもアニメーション処理が行われ続けてしまいます(まさしく本当の無限ループになってしまいます)。

ウィンドウを閉じた際に処理を行うには、 イベントハンドラの一つである onWindowClose 関数を作成します。

- 関数の形式 -

void onWindowClose( int componentID )

引数componentIDには、閉じられたウィンドウのGUIコンポーネントIDが渡されます。

この関数を作成しておくと、ウィンドウを閉じた際にシステム側から自動で呼び出されます。

プログラム例

それでは、実際にアニメーション処理を記述してみましょう。 ここではカメラアングルの変更を分かりやすくするため、座標軸モデルも配置します。 様々なモデルの生成と配置に関しては次章で詳しく扱いますので、 とりあえずは下のように記述し、実行してみてください。


import Graphics;
import Graphics3D;
import GUI;


// グラフィックスデータと3DCGレンダラーの生成
int graphicsID = newGraphics( );
int rendererID = newGraphics3DRenderer( 800, 600, graphicsID );

// 表示画面の生成
int windowID = newWindow( 0, 0, 800, 600, " Hello 3DCG ! " );
int labelID = newImageLabel( 0, 0, 800, 600, graphicsID );
mountComponent( labelID, windowID );

// マウス操作で視点を操作できるようにする
setGraphics3DDefaultEventHandler( rendererID, labelID );

// 背景色を黒に設定
setGraphics3DColor( rendererID, 0, 0, 0, 255 );

//座標軸モデルを生成して配置
int axis = newAxisModel( 3.0, 3.0, 3.0 );
mountModel( axis, rendererID );


// アニメーション処理
bool mainLoopState = true;
while( mainLoopState ){
	sleep( 30 ) ;  // 30ミリ秒だけ停止
	paintGraphics3D( rendererID );  // 3DCGを描画
	paintComponent( labelID );      // GUIの再描画
	paintComponent( windowID );     // GUIの再描画
}
exit(); // ループを脱出するとプログラムを終了


// ウィンドウを閉じた際に呼び出される
void onWindowClose( int id ){
    mainLoopState = false;   //ループを脱出
}
Sample.vcssl

このプログラムを実行すると、ウィンドウが立ち上がり、黒い背景に座標軸モデルが描画されます。 そしてウィンドウ上で左マウスドラッグを行うと、視点が回転します。そして右マウスドラッグを行うと、 視点が平行移動します。さらにマウスホイールの回転操作で、表示内容の拡大/縮小を行う事もできます。

実行結果、黒い画面に座標軸モデルの図。
実行結果
真っ黒な画面に、座標軸モデルが表示される。マウス操作も可能。