ここでは、文字列をプログラムの一部として解釈する方法を扱います。
string 型変数が保持する文字列を、プログラムとして実行したい場合があるかもしれません。 例えば電卓ソフトウェアを製作する場合、ユーザーによって入力された数式(文字列)を処理し、 値を算出する必要がありますが、そういった処理を行うエンジンを自力で書き下すのは面倒です。
そのような場合、ここで述べる実行時解釈の機能を利用し、 文字列をそのままVCSSL プログラムの一部として実行すると便利です。
一行の式を計算して値を求めたい時は、eval 関数を使用します:
int i = eval("1 + 2");
print(i);
Eval.vcssl
上のプログラムを実行すると、VCSSL コンソールに 「 3 」 と表示されます。
eval 関数は、結果を string 型の配列で返します。 上の例では、要素数1 の配列で、0 番要素が "3" のstring 配列が返され、 それが暗黙の型変換によってint 型非配列のi に代入されたわけです。 なお、式が構文的に正しくなかった場合は無効値(NULL との比較が真)が返されます。
また、以下のように、代入を行う事もできます。
int i = 0;
eval("i = 1 + 2");
print(i);
EvalVariable.vcssl
この例でもVCSSL コンソールに「 3 」と表示されます。結果が構造体になる場合などは、 string 型配列では返せないため、このようにeval 内で代入する方法を取ります。
なお、eval 関数は、複数行(文)に渡る内容を実行する事はできません。
複数行に渡る内容を実行するには、「実行時オーバーライド」を使用します。
実行時オーバーライドは、関数の処理内容を、プログラム実行中に上書きする機能です。 この機能を利用する事で、string 型変数が保持する文字列を、関数の内容として処理する事が可能となります。 引数も取得でき、戻り値も返す事ができます。さらに、ローカルを宣言する事も可能です。
実行時オーバーライドを行うには、override 関数を呼び出し、 その一つ目の引数に関数名、二つ目の引数に(オーバーライドする関数の)引数情報、 三つ目の引数にプログラム記述内容を指定します。
- 関数仕様 -
最初の引数name には関数名を、最後の引数program には新しいプログラム記述内容を指定します。 問題は中央の引数argTypes ですが、これには実行時オーバーライド対象となる関数の引数情報を指定します。 argTypes の要素数は引数の個数に一致し、各要素には引数の型の名前を記述します。
例えば、以下のような関数を想定するとします。
このような関数を実行時オーバーライドするには、args には以下のようなstring 配列を指定します。
string argTypes[3];
argTypes[0] = "int";
argTypes[1] = "float";
argTypes[2] = "float[]";
OverrideTypeArgs.vcssl
なお、引数がvoid 型の関数をオーバーライドするには、args に要素数 0 の配列を指定します。
実際に実行時オーバーライドを行って見ましょう。例として以下のように記述し、実行してみてください。
string args[3];
args[0] = "int";
args[1] = "float";
args[2] = "float[]";
println("オーバーライド前 : " + fun( 8 ));
// オーバーライドする関数名
string name = "fun" ;
// オーバーライド後のプログラム記述内容
string program = "int x = i * i ; return x ;" ;
// 引数の型/個数指定
string args[1];
args[ 0 ] = "int";
// 関数fun の処理内容を実行時オーバーライド
override(name, args, program);
println("オーバーライド後 : " + fun( 8 ));
// オーバーライド対象の関数
void fun(int i) {
return i;
}
Override.vcssl
このプログラムを実行すると、「 オーバーライド前 : 8 」と 「 オーバーライド後 : 64 」という結果が2 行に渡って出力されます。
このプログラムでは、関数fun は受け取った引数をそのまま返すよう記述されています。 しかしそれを実行時オーバーライドにより、引数の2 乗を返すように変更したわけです。
実行時オーバーライドで上書きする処理内容の中で、 グローバル変数(すべてのスコープの外側で宣言され、プログラム中のどこからでもアクセスできる変数) を使用する事も可能です。また、別の関数を呼び出す事も可能です。
例に挙げたプログラムでは、実行時オーバーライドで上書きする新しい処理内容の中で、 int型の変数x を宣言しています。このように、実行時オーバーライドする処理内容の中で、 新しい変数を宣言して使用する事も可能です。
ただし、実行時オーバーライドで宣言した変数はローカル変数となるため、 実行時オーバーライドの対象となった関数の中でしか使用できません。
実行時オーバーライドは既存の関数を上書きするものであるため、 別の新しい関数を宣言する事はできません。